STORYSHO Kizaki

#005-4 哲学恵は2ヶ月程前、ブルーナイトに

2021.08.29

#005-4 哲学恵は2ヶ月程前、ブルーナイトに1人でやって来くると、たまたま着いた翔を気に入り、以来、ギャルソンズが定休日の水曜日に週1回のペースで店を訪れ、翔を指名していた。そしてその日も、いつも通り恵は1人でやって来た。しかし、その表情は沈んでいた。 「どうしたの恵さん。浮かない顔しているけど」 「フロアのバイトの子が辞めちゃったのよ。私1人でバーテンとフロアやっているから、もうてんてこ舞いなの」 「カウンターとフロアを1人でやるんじゃ大変だね。次のバイトは、いつ入るの?」 「それが…ウチ、今、苦しくてさ」 「だったら、時給は安くていいから僕がバイトするよ。恵さんの店、良い店だから、やり方を考えれば絶対、繁盛するよ」 「そ、そんなぁ…翔君、ここのメインホストの1人じゃない」 「店は遅番にしてもらうよ。今は8時から翌朝6時までのフルタイムだけど、それを0時からにしてもらうよ」 「そんなことできるの?」 「成績上位の人は皆、そうしているよ。ホストクラブに来る客って飲食業や水商売、風俗の女性が多いから、仕事を終えてからだと真夜中0時過ぎっていうのがほとんどなんだ。僕のお客もそういう人が多いし、先月も上位の成績だったから、それくらいのワガママは聞いてくれると思う」 「じゃ、甘えさせてもらうわ…」 利害ではなく、困っているなら少しでも手助けをしたいという翔ならではの申し出だった。早速、翌週から「ギャルソンズ」のウェイターと「ブルーナイト」のホストという2足のわらじを履く事になった。